強制わいせつ致傷。
<事件のあらまし>
被告人は30歳くらい。地方出身、前科前歴は暴行窃盗などで2回、これまでは事件のために仕事先を転々としていたが事件当時はIT関係の派遣の会社に登録し、単身東京で会社の寮に住んでいた。仕事が待機中であり、コロナ禍のため引きこもり気味の生活をしていた。
事件当日も日中家にいたが気晴らしをしようと思って電車に乗って繫華街に出かけて、焼肉店で焼肉を食べてビールを2・3杯のんで店を出たところ、女性の胸を触れるキャバクラの客引きに会い、行きたくなかったがしつこくて断れずに店に入り焼酎の水割りを何杯か飲んで女性と話したが胸を十分に触ることができずに、1万3千円を払って店を出たが、不服に感じながら歩いていると今度はガールズバーの客引きに会い。そこでも焼酎の水割りを何杯か飲んで店をでて、帰途についた。
自宅の最寄り駅を降りて徒歩15分ほどの自宅に向かって歩いていたところ、自宅まであと5分ほどの信号機で被害者の女性をみつけた(被害者も気づいていて被告人の服などを確認している)、当初は「きれいな人だな」と思った程度で犯行するつもりはなく、信号が変わって歩き始めたが、たまたま同じ方向だったので後をついていくような形になった。
被害女性は、信号待ちしていた男性がついてきているのを感じたため、以前から知っていた防犯カメラを意識しながらカメラ側を歩いていた。その後、女性が暗い路地に曲がっていったが、被告人は曲がらずいったんは通り過ぎたが、突如犯行を思い立って走って被害者の後を追いかけた。
被告人は、被害者の背後から覆いかぶさるように抱き着いて、右手で被害者の胸をわしづかみにして数回強くもんだ。被害者は突然のことに驚いたのと、被告人の体重に押されたため腰砕けになって倒れ込んだ。その際に、「キャー」と叫んだところ、背中の肩甲骨のあたりを拳骨(と感じた)でなぐられた。被害者はこのままでは殺されるかもしれないという恐怖を感じたが、被告人はその場から逃げて行った。
<被害者の供述書の要旨>
暴力によって全治2週間の負傷を負い。右の背中の痛みは1週間ほどは右手でドアを開けられないほどだった、足にも打撲や擦過傷があり歩くと痛みがしていた。
事件後は、通報するが考えたが両親が心配するのではと思い、だれにも相談できないまま翌日を迎え、友人に相談したところ警察に行くことを決めて交番に行った。
今でも、夜の一人歩きは怖いのでタクシーを使うなどしているが、事件のあった道に来ると思い出して怖くなる。
<被告人の母の証言>
母親は遠方にいて足が悪く出廷できないため書面にて、社会復帰後は一緒に暮らして再犯を防ぐために監督するとのこと。被害弁償については、本人に代わって支払うつもりであったが、被告人の兄弟の反対があり被害弁償は本人にさせることとしたといった内容が書かれていた。
<弁護人:被告人質問>
被告人には両親と兄が2人いて、父はタクシー運転手、母はパートで働く。専門学校で3年間プログラミングを学んで、ITの派遣会社にて働くようになるが、酒に酔うと問題を起こすことがあり、窃盗と暴行で2回逮捕されている。奨学金などの借金が100万円あった。
保釈金や被害弁償を家族に頼みたかったが、前科のこともあり兄からは刑務所に行った方がよいと見放されて支援してもらうことができなかった。
弁護士から性被害者の本なども読ませてもらったことで被害者の心情を学ぶことができて、改めて被害者にたいして申し訳ないことをしてしまったと感じているとのこと。
過去の2回の裁判では母親が証人として出廷してくれたことについては、恥ずかしい思いをさせて申し訳なかったと感じていると、涙。
<検察官:被告質問>
事件後、逮捕されるまで自首しなかったのは、大したことをしていないと考えていたことと、裁判になることを恐れたためという。
ストレスで酒に酔うと起こしてしまうということについて、それにしてもストレスの解消になぜ女性に暴力をするのかという質問が繰り返されたが、ストレスが原因であり、特別に女性にコンプレックスを持っていることもないという。
被告人は前歴についての判決の記憶もあいまいで、その時の再犯防止対策の約束もうろ覚えでしかなかった。
<被害者の対応>
被害者は、事件後は被告人からの謝罪文や被害弁償の話を待っていたが、いつまでたっても動きがなかったことや、被害弁償が後回しにされたことについて怒っており、謝罪文も被害弁償も受け取り意志を示していない。
(感想)
結局のところ、被告人はなぜ自分が女性に暴力をふるおうとするのかについて、自分自身の中の女性とのかかわりに問題があるとは全く考えておらず、ストレスや飲酒が原因と考えているところに大きな問題があると思う。 ストレスや飲酒によって女性に暴力を振るってしまうのだという意味は、女性をストレス発散の対象として考えているという証言でもあり、それはとりもなおさず女性への偏見であり、被告人自身が持っている女性に対する修正すべき感覚であって、それに自ら気づかなければ再犯は防げない。 今回実刑は免れないと思われるが、刑期の中でどれだけそこに気づけるだろうか。出所後はまじめに働いて被害弁償金を作りたいというが、弁償すれば済むというものではなく根本にこたえていってほしいと思う。
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